年取った呪術師が亡くなりましたので、
彼の家族は木の上の、枝々の間に彼を葬りました。
その後ずいぶんたった、ある冬の日のことです。
通りかかったインディアンの夫婦が、夜を過ごす
いい場所を探してこの木の下へやって来ました。
彼らは火を起こして、夕食の支度を始めました。
夕食後に妻のほうがひょいと見上げると、
なにか黒くて長いものが木の枝に
引っかかっているのに気が付きました。
彼女が「あれは何かしら?」と聞きますと、
夫は「あれはただの死体だよ、大昔のね。
もう眠ろうや」と言いました。
彼女は「いやよ、ぞっとするわ。
寝ずにいた方がいいと思うわよ」と答えましたが、
夫のほうは耳も貸さずに寝てしまいました。
それからすぐに火は消えてしまいましたが、間もなく、
なにか動物が骨をかじるような音が聞こえてきました。
彼女は全く怯えてしまい、夜通しそこに座ったままでいました。
夜明けごろにはもう我慢できなくなって、彼女は夫を起こそうと
手をのばして揺すってみましたが、夫は起きてくれません。
彼女は夫がぐっすり眠り込んでいるのだろうと考えました。
がりがりかじる音は止んでしまいました。
やがて朝日が射したとき、彼女は夫のそばに寄って、
彼が死んでいることに気付きました。
夫の身体の左側はかじりつくされていて、
心臓がありませんでした。
彼女はそこから必死に走って逃げ、
とうとう人々の住んでいる集落まで来ました。
彼女は村人たちにこの話をしたのですが、人々は彼女が
夫を殺したんだろうと思い、信じませんでした。ですが、
彼女と一緒に、その場所まで行ってみることにしました。
行ってみると、実際に彼の死体には、
心臓がありませんでした。
頭上には死んだ呪い師が、毛布に巻かれ、
木の間にきちんと横たわっています。
彼らは死体を木の上から降ろし、
ぐるぐる巻きにした毛布を開いてみました。
死体の口と顔は、真新しい血でべっとりと濡れていました。